同じ小学校出身の子はいなくて、顔ぶれは変わったのに、わたしは変われなかった。

 みんながどんどん友だちをつくり、グループができあがっていくなか、わたしはひとりぼっちだった。

 二年生に上がっても、状況は変わらず、空気みたいな存在のままだ。

 幸い、いじめを受けたりすることはないけれど、何でもないような顔してひとりぼっちでいるのも疲れる。


 わたしはため息をついて、境内のなかでひときわ巨大なクスノキに近づいた。

 ずっとこの地を見守ってきたのだろう。

 歴史を感じさせるクスノキは、とっても神秘的で、わたしの想像力を刺激する。

 そっと、太い幹にふれる。

 木の妖精があらわれて、わたしに特殊な能力を与えてくれないかなぁ。

 みんなの人気者になれる能力を――。

 いやいや!

 わたしは、ぶんぶんと首をふった。

「ひとりぼっちでも平気です」みたいな顔しているのに、わたし、心のなかでは、こんなことばかり望んでる……。


 ――ミャーオ!


 ふと、クスノキの裏側から、猫の鳴き声がした。


「……?」


 わたしは、クスノキの裏に回りこんでみた。


「あっ……」


 一匹の黒猫が、ぷるぷると震えている。