センパイたちをふりきって、駅の改札をくぐり、ホームで帰りの電車を待つ。
空はすっかり暗くなっていた。
乱れた呼吸をととのえ、大きく息を吐きだす。
魅了の魔眼を与えられる前のわたしだったら、上級生にからまれても、ただだまって耐えるだけだったはず。
そして家に帰り、ごはんを食べ、風呂に入り、テレビを見ていても、頭のどこかに投げつけられた言葉が残っていて……。
寝るときに、くやしくて泣きながら布団をかぶっていたんじゃないかな。
そんなみじめで情けない自分は嫌いだ。
だけど。
何のためらいもなく、スマホをタップするかのように、魔眼で人を暗示にかけてしまう自分は、もっと嫌いだ。
じわっと涙が出て、視界がにじむ。
この涙で魅了の魔眼が消えるなら、いくらでも泣くのに……。
「あれ? 吉丸さんじゃない?」
横から男の子の声がして、わたしは視線を向けた。
え、だれだろう?
視界がぼやけているから、あわてて涙をふいて。
「あっ……望月くん……?」
一年生のときに同じクラスだった望月葵くん。