「ヤダ、そんなの冗談にきまってるじゃない! 吉丸さん、とってもステキよ!」

「そう! あたしも思った! 岸くんとお似合いよね!」


 ふたりのイヤミったらしい笑みが、どこかこびるような笑みに変わったのを見て、胸がスーッとした。


「そうですか。ありがとうございます。それでは、さようなら」


 背を向けたわたしを、ふたりがよび止める。


「吉丸さん! カフェでお茶しない?」

「そう、おごるから! お話ししましょうよ」

「結構です」

「あっ、待ってよ!」


 ふたりが必死に追いすがる。


「ついてこないで!」


 商店街の買い物客にじろじろ見られながら、わたしは必死に逃げた。