「ちょっとアンタ」


 ふいに、うしろからよび止められた。


「……?」


 ふり返ると、同じ制服姿の女の子がふたり、わたしをにらみつけている。


「アンタ、二年の吉丸って子じゃないの?」

「そ、そうですけど……」


 見覚えはないけど、三年生らしい。


「岸くんとイチャイチャしてた子って、アンタでしょ?」

「学園中のウワサになってるよ」

「はあ……」


 次に何を言われるか、予想がついてしまう。


「でもウワサなんて、大げさに尾ひれ羽ひれがついちゃうもんねー。ねえ?」

「ホーント。こんな地味な子に、ダンス王子が本気になるワケないもん。アンタ、からかわれてんのよ」


 ふたりは顔を見あわせ、ケラケラ笑っている。

 胸がちくりと痛んだけれど、その痛みも一瞬だ。


「センパイ、わたしは地味でしょうか?」


 ぐっと顔を近づけて、順番に目を合わせる。

 すぐに効果はあらわれた。