いつものように住宅街を進んでいると。


「久しぶりに寄っていこうかな……」


 このまま家に帰る気にもなれず、いつものルートを外れて、児童公園に向かう。

 公園では、小さな子どもたちが元気よく遊んでいた。

 自転車を止めて、歩きだすわたし。

 広々とした公園の隣には、小さな神社がある。

 高い木が密集した森のなかにあって、昼間でも薄暗く、子どもたちは寄りつかない。

 だから、ひとりで落ち着きたいとき、重宝している場所だ。

 石段をのぼり、鳥居をくぐると、森にさえぎられて日差しが弱まる。

 おごそかな雰囲気が心地いい。

 神主さんや巫女さんもいない、簡素な境内――。

 賽銭箱にフンパツして百円玉を入れ、鈴を鳴らし、手を合わせた。


「ええと……一度でいいから、みんなにチヤホヤされてみたいです」


 なーんてね。

 こんなお願いされても、神さまも困っちゃうよね。


 わたし、吉丸つむぎは先月、十四歳の誕生日をむかえたばかりの中学二年生。

 長閑(のどか)市の外れにある私立(せい)ネクサス学園中等部に通っているよ。

 小学生のころからおとなしくて、友だちもできなかったわたしは、両親のススメで中学受験した。

 塾通いが大変だったけれど、「環境が変われば、自分も変われるはず」と思ってがんばったら……。

 見事に合格!