「待てよ、吉丸はおれの天使だぞ」

「いや、おれの天使だよ!」

「つむぎちゃんは、A組のアイドルなのよ!」


 岩田くんたちが言えば、早野くんも負けじと返す。


「ふざけんな、吉丸ちゃんはおれの天使なんだからな!」


 すると、わたしの横に立っていた岸くんが腕をのばして、わたしの肩に手をそえた。

 そして、ぐいっと自分のほうへ引き寄せて――。



「天使だの、アイドルだの、うるせーよ。つむぎはおれにとって大切な女の子ってだけだ。だれにも渡さねーよ」



 凛とした声が、耳元で響いた。

 汗の匂いにまじって、甘い香りがする。

 もう頭がくらくらして、この場に倒れこみそう。

 あの岸くんに、肩を抱かれちゃってるよっ!

 その場にいるだれもが、ぽかんとして、わたしたちを見つめている。

 昼休み終了をつげるチャイムが鳴っても、だれひとり動こうとはしなかった。