「キーホルダー?」

「うん、でもいいの。大丈夫だから」


 きっと魅了の魔眼が発動しちゃったよね?

 でも、魔除けの水晶玉はこんなに粉々に……。

 わたしは拾いあつめた破片をハンカチにくるんで、ブレザーのポケットにしまった。


「吉丸のせいで、なんかシラけたな~。せっかく楽しくダンスしてたのによ。湊斗も、そんな暗いやつにかまうなよ」


 背後から、早野くんのイライラした声がした。

 さすがにもう我慢ならない。


「ちょっと、早野くん!」


 ふり返って立ちあがると、早野くんは顔を突きだしてきた。


「なんだよ? なんか文句あんの?」


 眉間にしわを寄せている早野くんと、至近距離で目が合ってしまった。

 ああっ! わたしのバカぁ!


「おい、早野! おまえ、いい加減にしろよ」


 岸くんが割って入ろうとしたら、早野くんの表情がゆるんだ。


「……いや、よく見りゃ吉丸ちゃんは天使だわ」

「え……?」

「天使だって!」


 固まっている岸くんを無視して、早野くんはわたしの手を取った。


「ねえ、おれとデートしてよ!」


 あちゃー。早野くんは強めに暗示にかかっちゃった。