「……ったく、何やってんだよ、早野」

 岸くんに肩を小突かれ、早野くんは肩をすくめた。

 わたしは、あわててかがみこんで花壇を調べたけれど、足あとがついただけで、花や根は踏まれてないみたい。

 よかったぁ。

 岸くんが止めてくれなかったら、どうなっていたか……。

 安心したら、怒りがこみあげてきた。


「……ここの花はね、園芸部のみんなで大切に育ててきたのよ。踏みつけられるために、ここに咲いてるんじゃない」


 自分でもおどろくほどストレートに、力強く言葉が出た。

 言いたいことを飲みこんできたわたしだけれど、今のわたしには魅了の魔眼がある。


「吉丸、ごめんな……」


 すっかりしょげかえっている岩田くんがあやまった。


「あたしたちも騒いだし……。つむぎちゃん、ごめん」


 佐々木さんたちもうなだれている。


「……もういいよ。花は無事だし……」


 自分でもわかってる。わたしに怒る資格なんてないって。

 わたしが魅了の魔眼でみんなに暗示をかけなければ、この騒ぎは起きなかったもん。