「えー、結構いいじゃん? 花も咲いてるし」


 工藤さんはスマホを取りだして、洋楽のヒップホップを流しはじめた。

 すると、ブレザーの下にパーカーを着ている男の子――早野くんが踊りだして。

 たしか、このふたりもダンス部だ。

 岸くんは肩をすくめると、「しゃーねーな」って言いながら、いっしょに踊りはじめた。

 他の子らは、ふたりのダンスを見つめて、肩をゆらしてノッている。

 いたたまれなくなったわたしは、じょうろを手に持って、こそっと立ち去ろうとした。


「うわっ! びっくりした!」


 みんながわたしに気づいて、目を丸くしている。

 思わず、わたしの動きも止まった。


「ヒトいたのかよ。気づかんかったわ」


 男子が言うと、工藤さんがわたしを見て、

「なんだ、吉丸さんか~」

「んあ? 友だちか?」

「うんにゃ、一年のとき同じクラスだっただけ~」


 いつのまにか音楽も止まっていて。

 ダンスをやめた早野くんが工藤さんの横に来た。


「なになに、どうしたの?」

「ほら、吉丸さん」

「え~、だれ?」

「うちら一年のとき同じクラスだったじゃん。てか、早野っち、キツ~」


 工藤さんが吹きだすと、みんなが笑った。

 岸くんをのぞいて――。