すると、岩田くんはニヤニヤして、

「おれが遅れてきたら、アレを言ってたはずですよ。なあ、岡?」

 と、岡くんに目配せした。

 岡くんは待ってましたと言わんばかりに立ちあがって。


「こーら、岩田! 遅れるんじゃない! ぶったるんどる! 反省しろ!」


 さっきよりもクオリティが上がっているモノマネに教室が沸いた。

 みんなの笑い声が響く教室で、ひとり、うつむいているわたし。

 ちょっと口元がゆるんだけれど、笑っているところを見られたくない。

 わたしは、ぎゅっと強く、くちびるをかんだ。



     * * *



 学校が終わると、部活や委員会の用事がなければ、わたしは一目散に家へ帰る。

 今日は何もなかったので、すぐに学校を出て、電車に飛び乗った。

 三つ目の駅でおりると。

 駅前の駐輪場に止めている自転車を走らせた。

 十月初旬――。

 厳しい残暑が長くつづいて、もうこのまま秋なんて来ないかもと思ったのに、十月に入ると、なんだかんだで秋らしい風が吹くようになった。

 肩よりのびた髪がゆれる。

 衣替えでブレザーを着るようになったけれど、それでも肌寒いくらいだ。