ひとり納得していたら、岸くんは中庭を見わたして。


「おれ、ダンス動画やってんだけどさ……」

「はあ……」


 それも知ってます。

 岸くんの異名は【ダンス王子】だもん。

 ダンス部に入ってて、高等部にも彼にかなう先輩はいないくらい、飛びぬけてダンスがうまい。

 さらに岸くんは自分のダンスを動画投稿サイトにアップしていて、それが大人気で、テレビでも紹介されたほど。

 ……以上のことは、クラスの女子たちが話しているのが耳に入ったんだけど。

 ちなみに、動画はチラッと見たことがある。

 たしかにうますぎて、【ダンス王子】の異名はダテじゃないと思った。

 わたしなんかとは住む世界がちがう男の子だ。

 それなのに……。

 岸くんは笑顔こそ見せないけれど、わたしにざっくばらんに話しかけてくれている。


「いつも学校の屋上とか、橋の下で撮ってて、ワンパターンになってたんだよね。こういう花が咲いてる場所で撮ってみるのもいいかなって……」


 それは素敵だけど、じゃあ、わたしは邪魔だよね?