スラッと背が高くて、うっすら茶色い髪が、陽光を反射してキラキラ光っている。

 切れ長の瞳は涼やかだし、鼻すじはよく通っていて、見とれてしまうほど美しい顔立ち――。

 つまりはイケメン!

 水やりの手が止まったわたしと、花壇をはさんで、岸くんの視線がまじわる。


「ここ、落ち着く場所だな」


 えっ、わたしが話しかけられたんだよね?

 あわてて周りを見わたしたけれど、ほかにはだれもいない。


「は、はい……。その……人はあんまり来ないかと……」


 たどたどしく答えるわたし。

 さっきまでクラスの主役として堂々としていた自分は、どこかに行ってしまった。

 これじゃ、いつものわたしだよ。

 岸くんはわたしを見つめたまま口をひらいた。


「おれ、二年C組の岸湊斗」


 もちろん知ってます!

 学園の人気者なのに、自分からしっかりと名前を言ってくれることに誠実さを感じる。


「あっ、わたしは二年A組の吉丸つむぎ……です」


 あわてて、わたしも名乗る。

 すると――。


「知ってる」


 岸くんが事もなげに言ったから、びっくりしてしまった。

 えっ、わたしなんかのことをどうして……?

 ううん、「友だちがいない、ひとりぼっちの女子」だと陰口をたたかれているのを耳にしたのかもしれない。