花壇にはコスモスがピンクの花を咲かせ、今が見ごろ。さらにパンジーも開花したところだ。

 ここはあまり生徒が寄りつかないので、他人の目を気にしないで落ち着ける場所で。

 わたしにとって、秘密の花園――。


「はぁ。やっぱり、わたしは人気者なんてガラじゃないんだね」


 ため息とひとりごとが口からこぼれ出る。

 魅了の魔眼のおかげで「みんなにチヤホヤされたい」という願いはかなった。

 最初はうれしくてテンション上がったけれど、みんなの視線をあつめる状態に慣れてないから疲れてしまって……。

 人気者って、大変だ。

 もう、みんなの暗示をといちゃおうかなぁ。

 ブレザーのポケットからハンカチを取りだして、くるんであった魔除けの水晶玉を見つめる。

 ――と、足音がして、ひとりの男の子がやってきた。

 あわててハンカチをしまう。

 ドキッ。

 同じ二年生の(きし)湊斗(みなと)くんだ!

 クラスが離れているから話したことはないけれど、名前と顔はしっかり一致する。

 この学園には四人のイケメン王子がいて。

 岸くんは、そのうちのひとり。

 学園のウワサ話に(うと)いわたしだって、それくらいは知ってる。