「お、おれ、吉丸と話してみたかったんだ!」

「お、おれも!」


 こんな調子で魅了の魔眼を使いつづけて、昼休みに入るころには、クラスの三分の一の生徒はわたしに好意を抱くようになっていた。

 みんながわたしを取り囲み、和気あいあいとした空気が流れる。

 わたしが主役! すっかりクラスの人気者!

 だけど……。

 ひとりになりたいわたしがいる。


「ちょ、ちょっとトイレ……」

「じゃあ、あたしたちもいっしょに……」


 席を立ったわたしに、佐々木さんたちもついてこようとした。


「ううん、ひとりで行きたいから……」

「待ってよ、つむぎちゃん!」


 わたしは必死に走って、追いかけてくる女子をふりきった。

 トイレを素通りして、昇降口まで降りて、校庭に出る。

 ボール遊びしている子らを横目に、わたしは、じょうろで花壇の花に水やりしていった。

 わたしは園芸部に所属していて、今日が水やりの当番だと思いだしたんだ。

 そして、校庭から離れて、人気(ひとけ)のない中庭へと移動した。