魔眼の効果は絶大だった。

 家に帰ると、わたしの目が赤くなっていることに気づいたお母さんが、いぶかしげに顔をのぞきこんできて。


「つむぎ、目が充血してない? アンタまた夜おそくまで本読んでたでしょ?」


 し、しまったあ!

 至近距離でお母さんと目を合わせちゃった!


「……まあ、そんなことより、おやつあるわよ」

「う、うん……」


 急に笑顔になったお母さん。


「晩ご飯は何食べたい? 今日はつむぎの食べたいものをつくるわよ」

「ホント!? じゃあハンバーグ!」

「いいわよ。あっ、パン粉をきらしてたわね」

「あっ、わたし買ってくるよ」

「いいの、いいの。つむぎはおやつ食べて、テレビでも見ながら待ってなさい」


 お母さんが妙にやさしい。

 やっぱり魅了の魔眼が発動してしまったみたい。

 お母さんにかけられた暗示をとかなきゃ!

 賢ちゃんに借りた魔除けの水晶玉をブレザーのポケットから取りだそうとして、手が止まる。

 ううん、まだいいや。晩ご飯を食べてからにしよっと。