「兄さんの負けだね」


 怜音くんが言うと、葵くんが苦笑いして、

「まあまあ、その辺で。吉丸さんがキツネにつままれたような顔してるよ。種明かしをしようか」

 と、左手をかかげた。

 手首にはミサンガが巻かれている。


「これ、姉ちゃんにもらったんだ。長閑中央駅の商店街にある魔法グッズの店で買った魔除けなんだって」

「えっ! それって、魔法雑貨店ウィッチ堂!?」


 びっくりしてわたしがたずねると、葵くんはうなずいた。

 そういえば、遙さんはオカルト好きだった!


「おれも、同じ店で買ったよ」


 紫音センパイが、右手の薬指のシルバーリングを見せながら言った。


「バンドマンの間で、あの店は話題になってたからな。イケてるアクセサリーがあるって……」

「兄さんが、『ふたつ買ったから』って、ぼくにくれたんです。魔除けとは知らなかったですけど……」


 怜音くんも、うれしそうにシルバーリングを見せた。


「――つまり、おれたち三人は、白魔女の魔除けを身につけていたことになるね。だから、吉丸さんの魅了の魔眼は、おれたちには通用しなかった……」


 葵くんが説明すると、神谷兄弟がうなずいた。