「なんだよ、べつにいいだろ」


 暗いから、あまりよく見えないけれど。

 口をとがらせる湊斗くんの顔は、きっと真っ赤だと思う。

 そして、わたしの顔も……。


「よかったぁ。わたし、湊斗くんを暗示にかけてなかった……」


 ほっとして、わたしはしゃがみこんだ。


「ホントによかった……」


 ぽろぽろと涙が流れてくる。


「泣き虫だなぁ、つむぎは……」


 湊斗くんもしゃがみこんで、わたしの頭をなでた。


「泣きやむまで、また抱きしめるぞ?」

「ええっ!」

「じゃあ、これは……?」


 湊斗くんは、涙でぬれたわたしの頬に、やさしくキスした。


「え……? え……?」


 目をぱちくりさせるわたしに、湊斗くんがニッとして、

「涙とまった? もう一回しようか?」

 って言った。

 もう涙はとまったけど、今のは荒療治すぎるってば!

 胸がキュンキュンして、どうにかなりそう。

 ピロリン♪

 湊斗くんのスマホの通知音が鳴った。

 メッセージを確認すると、湊斗くんがくやしそうに言う。


「ちぇっ。おれのアピールタイムは終了だ。隣の公園で、ほかのイケメン王子どもが待ってる。行こうぜ」

「えっ、ほかのイケメン王子って……」

「葵と神谷兄弟だよ」

「ええっ!?」