そして、心臓が大きく跳ねるのを感じた。

 花壇に、つむぎがいたんだ!

 引き返そうかと思ったが、目が合ってしまった。


「ここ、落ち着く場所だな」


 気がつくと、おれは話しかけていた。

 おまけに、「リハーサル動画に出てくれないか?」なんて口走っていた。

 ふたりきりで、目の前でダンスを見てもらいたい! という欲が出てしまったんだ。

 我ながら、不自然なお願いだと思ったが、つむぎは了承してくれた。


 夢のような時間だった。

 つむぎの目の前で踊れて、さらにはいっしょに動画を撮れたんだからな。

 すると、早野や工藤たちの邪魔が入って、おれは心のうちで舌打ちした。

 ここは、おれとつむぎだけの、大切な空間なんだ。


「新しい撮影場所を探してたんだけどさ、ここもイマイチだな。行こうぜ」


 邪魔されたくない一心で、心にもないことを言ってしまった。

 あとでひどく後悔したけど……。


 そのあとは不思議なコトばかりだった。

 つむぎのクラスメイトがやってきて、つむぎのことを「A組のアイドル」だの、「おれの天使」だのって言いはじめた。

 おまえら、つむぎのことを「暗い」「空気」だって馬鹿にしてただろうが!

 おれは知ってるんだ!