賽銭箱にお賽銭を入れて、鈴を鳴らし、ふたりで手を合わせた。


 ――みんなにチヤホヤされたい自分は卒業です。これからのわたしを見守っていてください……。


 心のなかで、わたしは神さまにお願いした。


「つむぎ。ふり返ってごらん」


 賢ちゃんに言われて、ふり返るわたし。

 足音とともに、黒い人影が近づいてくる。


「この神社は、つむぎにとっても、ぼくにとっても大切な思い出がつまった特別な場所だろ? だから、今回のことでつむぎの足が遠のくのは、ぼくもくやしいんだ。イヤな思い出は、イイ思い出で上書きすればいいのさ」


 賢ちゃんは、わたしの背中をやさしく押しだした。

 黒い人影の顔が、ゆっくりとあらわになる。

 ――――湊斗くんだった。


「つむぎ。おれは、ずっと前からおまえのことが……」