でも、わたしは気づいていた。

 今朝の悪夢は、性悪(しょうわる)な黒魔女マヤが見せてきたもので、魔眼を失ったわたしが味わう絶望そのものだってことを――。

 四人のイケメン王子たちに夢で言われたことを、そっくりそのままじゃないにせよ、近いことは言われる運命なんだ。

 湊斗くんがいる講堂へと向いていた足を止め、わたしは引きかえした。

 もうだれにも会いたくない!



     * * *



 そのあと、校門を飛びだして、電車に乗ったことも、自転車に乗ったことも記憶にない。

 気づけば家にたどりついていて、お母さんに何も言わず、自分の部屋にカギをかけて閉じこもった。


「つむぎ! 学校で何かあったの!? 開けなさい!」


 わたしの様子がおかしいことに気づいたお母さんが取り乱している。

 暗示にかかっているお母さんだったら、猫なで声を出して、やさしく様子をうかがってくるはず。

 お母さんの暗示もとけたんだとわかって、ちょっと安心した。

 だけど心は晴れない。

 今のわたしには、もう何もない……。

 元の、教室の空気みたいな存在に逆戻りしたんだ。