「魔女はウソつきなの。おぼえておくといいわ」


 マヤは肩にかかった髪を手ではらうと、

「でも、つむぎには感謝しているの。これはホントよ。だから、あなたの願いをかなえて、夢をみさせてあげたわ。みんなにチヤホヤされて楽しかったでしょう?」

 って、冷ややかな笑みを浮かべた。


「…………」


 ぼうぜんとしているわたしに、マヤがさらに追いうちをかける。


「夢はいつか覚めるのよ。魅了の魔眼を失い、あなたは元の吉丸つむぎに戻った――。ただ、それだけのことよ」


 マヤは髪をひるがえし、わたしに背を向けた。


「黒魔女は悪さしないって言ったわね。これもホントよ。命をおびやかすような真似はしない。……でもね、有頂天になっていた女の子が、絶望する姿をみるのは大好きよ」

「待ってよ……」

「ステキな表情をありがとう。じゃあね、お人よしのお馬鹿さん」


 マヤのからだを、まがまがしい光が包みこむ――。

 光が消えたとき、マヤの姿もなかった。

 波が引くように、全身から力がぬけて、地面にヒザをつくわたし。

 胸に手を当てる。

 穴でもあいているのかと思うほど、スースーした。

 もう、わたしのからだには魔石がない。