涼やかな瞳で、わたしを見つめているマヤが口をひらいた。


「あなたに預けていたものを返してもらったわ」

「ど、どういうこと……?」


 にやりとするマヤ。


「ウィッチハンターに追われていると言ったでしょう? やつらは魔石の反応を手がかりにして追ってくる。魔石は、魔女にとって心臓のようなもの。だけど、追っ手から逃れるために、一時的に、あなたに預けることにしたのよ」

「え……? だって、助けてくれたお礼だって……」

「ごめんなさい。それはウソだわ」


 マヤは、ぺろっと舌を出した。

 頭がくらくらして、その場に倒れこみそうになる。

 そんなわたしにお構いなしに、マヤは話しつづけた。


「魔女が持っていると、魔石はどうしても魔力に反応してしまうの。でも、魔力のないつむぎに持たせれば――ましてや、体内に入れてしまえば、ウィッチハンターは魔石を見失う」


 マヤは、長い舌でくちびるをなめた。


「あなたが、あの神社に現れたのは、これ以上ないくらいのタイミングだったわ。つむぎに預けるのが遅れていたら、あたしはウィッチハンターに退治されていたでしょうからね」

「そんな……」

「ウィッチハンターもあきらめて、どこかに行ったみたい。あたしもそろそろ長閑市を出るわ」

「わたしをだましたの!? マヤさん!」


 声が震える。