生徒や来場者で混みあっているなか、わたしはすりぬけるようにして走り、ついに中庭までやってきた。

 いた! マヤだ!

 花壇でわたしを待ちうけていたのは、黒猫の姿のマヤだ。


「マヤさん!」


 マヤに駆けよると、猫の目が妖しく光った。

 これって、まさか、今朝の夢と同じ……?

 気づいたときには遅かった。


「熱い……。熱いよ……」


 胸が燃えるように熱くなってきて、うめくわたし。

 夢と同じように、からだの内側から、まばゆい光をはなつものが出てきた。

 魔石だ!

 つかもうとしたけれど、夢のなかでつかんだときの熱さを手が覚えている。

 出そうとした手を引っこめると。

 魔石はマヤのほうへ飛んでいき、その黒猫のからだに入った。

 とたんに、黒猫はぼわん! と白い煙に包まれて――。

 煙が晴れると、あの美しいマヤが現れたんだ。

 細いからだを黒いワンピースで包み、銀色のショールを肩にかけている。

 ウェーブのかかった長い黒髪が、秋の風にゆれた。

 妖しいまでの美しさに、これもまた夢じゃないかと思えてくるけれど……。