「ありがとうございました」


 わたしは先生にお礼を言って、保健室を出ようとした。

 すると、賢ちゃんが神妙な顔つきで、

「あのさ、葵くんと、あと神谷兄弟だっけ? さっきイケメン王子たちを見て気づいたんだけど……」

 って切りだしたけれど。

 わたしは、賢ちゃんの言葉が、まるで頭に入っていなかった。

 聞きおぼえのある声が、わたしをよんでいたから……。

 耳に届いてくる声ではなく、わたしの頭のなかで響く声――。



 ――つむぎ。あなたに会いにきたわ。



 黒魔女のマヤだ!

 マヤが、わたしを待ってる!

 中庭にある花壇――【秘密の花園】で!

 わたしは走りだしていた。

 賢ちゃんがよびとめた気がするけれど、もう止まれない。

 マヤが待ってるんだもん!