「吉丸さん! 大丈夫かい!?」


 さわやかに飛びこんできたのは、葵くん。

 実行委員で忙しいのに、駆けつけてくれた。


「吉丸センパイ! 大丈夫ですか!?」


 泣きそうな顔で入ってきたのは、怜音くんだ。


「ぼくがいっしょにいながら……。ぼくの責任です……」


 はげしく落ちこんでいるから、なだめるのが大変だった。

 そして、さらに大変だったのは――。


「つむぎ! ケガしたってきいたから、ステージのリハをぬけだしてきたってのによ……」


 こぶしをぷるぷる震わせる紫音センパイ。

 わたしが平気だってわかったら、急に怒りだした。

 理不尽すぎるんですけどっ!


「……まっ、ケガじゃなくてよかったけどな」


 紫音センパイは、いつもの意地悪そうな笑みではなく、安堵(あんど)の色がにじむ笑みを浮かべた。

 肩で息をして、玉のような汗が吹きだしているから、わたしを心から心配してくれたんだとわかる。

 ズルいよ。

 これじゃ「湊斗くんのダンスのほうをえらびます」なんて言いにくい。

 紫音センパイは、わたしの頭にポンと手を置いて。



「今日は、つむぎのために歌って、ギター弾くよ。だから……おれをえらべ」



 女の子たちが黄色い声をあげた。