「のっぺらぼうだあ!」

「きゃああああ!」


 わたしと怜音くんは逃げた!

 そのあとも狼男、白いワンピースに長い黒髪の幽霊、ミイラ男、化け猫が出てきて、絶叫するわたしと怜音くん。

 日本と外国の幽霊、妖怪がごちゃまぜで、何が何だかわからない。

 けれど、しっかりこわいっ!

 一番こわかったのは、絶妙のタイミングでゾンビが出てきたときだ。


「きゃああああああああ!」


 わたしはのけぞって倒れてしまった。


「び、びっくりしたぁ……。あれ……? 怜音くん、どこ?」


 いつのまにか、怜音くんと手がはなれてしまっていた。


「あ、あれ……?」


 立ちあがろうとしても、ぜんぜん立てない。

 こ、腰がぬけたっ!?

 そのとき、黒い影がわたしのそばに立った。

 見上げると――。

 長身の男の子が髪をオールバックにして、黒いマントをはためかせていて、口元にはキバが光っている。

 吸血鬼ドラキュラだあ!

 こわいけど、逃げたくても動けない。

 ドラキュラが、かがみこんできた。


「きゃあ! こないで!」


 反射的に、手をバタバタさせる。


「わっ! ちょっ……暴れるなって! つむぎだろ!?」

「えっ……?」

「おれだよ! 湊斗だ!」


 暗くて顔がよく見えないけれど、その声はたしかに湊斗くん!