ただの夢だから、気にする必要ないんだ!

 必死に自分に言いきかせる。


「吉丸センパイ! 入りましょう!」


 怜音くんはノリノリだ。


「う、うん……」


 わたしは、こわいの平気だけど、湊斗くんがいるところに怜音くんといっしょに入るのはちょっと……。


「一年のイケメン王子といっしょか! ちょっと()けるけど仕方ねえ! おふたりさん入場でーす! 暗いから、手つないで、ゆっくり進んで!」


 早野くんに強引に背中を押され、真っ暗な教室のなかに入れられてしまった。

 外からの光が完全にさえぎられ、何も見えない。

 さすがに、ちょっとこわいかも。


「しっかり、ぼくの手を握っててくださいね……」


 怜音くんが先に進んで、わたしの手を引いてくれるのは頼もしい。

 すると、とつぜん真っ赤な照明がついて、女の子が現れた。


「うわっ!」

「きゃっ!」


 怜音くんがさけんだから、わたしもつられて、びっくりしてしまった。

 背中を向けた女の子が、しくしく泣いている。

 お(きょう)のBGMが流れてきて、さらにムードが出てきた。


「あの……どうして泣いてるの?」


 わたしが、おそるおそる、女の子に声をかけると――。


「おまえの顔をよこせっ!」


 ふり向いてさけんだ女の子の顔には、目も鼻も口もなかったんだ!