ってか、遙さんの苗字、「望月」って言わなかった?

 まさか……?


「わたしの弟が二年D組にいるんだけど、つむぎちゃん、知ってる?」


 やっぱりそうだ!


「ええ、葵くんですよね?」

「あら、つむぎちゃん、葵と友だち?」

「えっと……葵くんは学園の有名人ですから……」


 賢ちゃんに目配せしながら答えるわたし。


「あっ、まさか……遙ちゃんの弟って、イケメン王子!?」


 目をぱちくりさせた賢ちゃんを見て、遙さんは吹きだした。


「なに、あの子、そんなふうによばれてんの? 王子とか似合わなーい」


 そうかなぁ? 

 さわやかで、まさに王子さま! だけれど、お姉さんから見たらそうなのかな?

 そういえば、葵くんはお姉さんのことを「口うるさくて、横暴だ」だなんて言ってたっけ。


「あの子ってば、教室にいなかったのよ。どこにいるんだか……」

「葵くんは文化祭の実行委員ですから、今日はすごく忙しいと思います。学園内を走りまわってるかも……」


 わたしが教えると、遙さんは肩をすくめた。


「そうかぁ。まっ、そのうちバッタリ会うでしょ。それより、せっかくだから遊んでいこうよ」