ひどい言葉がきこえてくる。

 面と向かって言われたことあるもの、陰で言われていたこと、そう思われてるんじゃないかと妄想したことあるもの――。

 それらが混ざりあっている。


「もうやめてっ! そんなの聞きたくないっ!」


 耳をふさいで、しゃがみこむと。

 人影がふたつ、目の前に現れた。

 どこからか光がさしこみ、ふたりの顔があらわになる。

 ――神谷兄弟だった。

 ふたりは、わたしを冷めた目で見おろし、

「おまえ、やっぱり魔性の女だったんだな。おそろしいやつだ」

「ぼくの心をあやつっていたなんて……。見損ないましたよ、吉丸センパイ……」

 それぞれ言い捨てると、姿を消した。


「待って! 紫音センパイ! 怜音くん!」


 わたしのさけび声がむなしく響く。

 そして、ふたたびシルエットがふたつ、現れた。

 今度は――湊斗くんと葵くんだった。

 ホッとしたのもつかの間、汚ないものを見るかのような、ふたりの目つきに息をのむわたし。


「おれ、吉丸さんが、そんな女の子だとは思わなかったよ。もう、きみの涙はぬぐえない」

「葵くん……」


 葵くんの厳しい言葉が、わたしの心を刺した。