うっそうとした森のなか――。

 鈴の音にふり返ってみれば、賽銭箱がある。

 今の鈴は、だれが鳴らしたんだろう?

 わたしはひとり、いつもの神社にぽつんと立っている。

 強い風が吹いて、木々がそよぎ、髪がなびいた。

 言い知れぬ不安が、じわじわと胸に広がっていく。

 ふと、視線を感じて巨大クスノキを見やると――。

 わたしは、ぎょっとして立ちすくんだ。

 黒猫が前足をそろえて、どっしりと座り、わたしをじっと見つめていたんだ。

 あれ……? わたし、この黒猫を知ってる……?

 そうだ!


「ねえ、マヤさんでしょ!? わたし、マヤさんに会いたかったの!」


 わたしは、黒猫に駆けよった。


「あたしも、つむぎに会いたかったわ」


 黒猫は、マヤの声を出した。

 やっぱり、黒魔女のマヤだ!


「魔石のおかげで願いがかなったよ! 魅了の魔眼が使えるようになったんだけど、力をコントロールすることはできないかな? あまりに無差別に力が発動するから、みんなに申し訳なくて……」

「コントロールすることなんて、つむぎが考えなくてもいいのよ?」

「えっ……?」


 冷たい声を出したマヤの、猫の目が妖しく光った。

 すると、胸が燃えるように熱くなってきて……。