「賢ちゃん、恋してるよね?」

「は? な、な、何を言いだすんだ、急に……」


 目が泳ぎまくっている賢ちゃん。


「部屋をキレイにしてる! 急に色気づきはじめた! 健康的になった! 超キゲンがいい! 大嫌いなはずのラブソングを口ずさんでる!」


 わたしは、びしっと、賢ちゃんを指さして言いはなった。


「恋をしてるでしょ? しかも、すでにつきあってる!」

「うぅ……なぜバレたんだ……?」


 賢ちゃんは早々(はやばや)と観念した。


「そんなのバレバレよ。うれしさがダダもれになってるよ? 久子おばさんも気づいてるみたいだし」

「えっ、母さんまで?」


 バレないほうがおかしいってば。


「……で、お相手はだれ?」

「クラスメイトだよ」


 顔を真っ赤にして照れつつ、白状する賢ちゃん。


「へえ、同じ秀清高かあ。それにしても、なんでぼっちの賢ちゃんと……?」


 自分を棚に上げてたずねると、賢ちゃんは頬をかきながら教えてくれた。


「オカルト系の本を読んでたら、向こうから話しかけてきてくれたんだ。ぼくと同じで、オカルト好きでさ。それで意気投合して……告白されて……」

「向こうから!? そんな奇跡あるんだ!? デートは?」

「まだ一回だけ」

「次のデートの約束はしてあるんでしょうね? こういうのはね、矢つぎばやにしないとダメよ!」