久子(ひさこ)おばさん、賢ちゃんいる?」

「ええ、いるわよ」


 今日は家にいた伯母(おば)の久子おばさんが、にこやかに出むかえてくれた。


「つむぎちゃん、あのね……」


 二階に上がろうとしたわたしに、久子おばさんが顔を近づける。

 わたしはあわてて、顔をそむけて、耳を貸した。

 暗示にかけてしまわないよう、至近距離で目を合わせないようにしなきゃ。


「賢太朗ね、どうもカノジョができたみたいよ」


 小声で教えられ、わたしは飛びあがらんばかりにおどろいた。


「ええっ!? ホントに!?」

「あの子、そういうのかくすの下手だからね」


 久子おばさんが言った意味はすぐわかった。

 賢ちゃんの部屋は、きちんと片づけられていて。


「賢ちゃん、髪きった?」

「ああ、昨日、美容院に行ったから……」


 ぼさぼさだった髪も、小ぎれいに整えられている。

 あんなにげっそりしていたのに、血色がよくなって、肌つやもいい。


「つむぎ、ごめん。結局、魔石を取りだす方法は見つからなかったよ。調査は打ち切ってもいいか? つむぎもイケメンにモテモテで、毎日、充実してるみたいだしな。特に問題なしということで……」


 超ゴキゲンの賢ちゃんは、流行(はや)りのラブソングを口ずさみはじめた。

 すべての状況証拠から導きだせる答えは――。