「おーい、葵! 集合だぞ!」


 サッカー部の部員が、葵くんをよぶ声がする。


「おっと。じゃあ、おれ行くよ。吉丸さん、今日は応援ありがとうね」


 葵くんは、さっそうと駆けていった。


「……イイ試合でしたよね」


 葵くんの背中を見つめながら、ぽつりと怜音くんが言った。


「怜音くんも応援にきてたんだね」

「ええ、うしろのほうで見てました。感動しましたよ。望月センパイはサッカーをするために生まれてきたようなひとですね。岸センパイにはダンスがあるし、兄さんには音楽がある。ぼくはピアノやめちゃったし、もう何もないんです」


 淡々とした言葉に、ひどくさびしい色がにじんでいる。


「わたしも同じだよ。胸を張れるような才能もなければ、夢や目標もない。でもね……探してみようと思うようになったよ。自分が思いきり打ちこめるものを……」

「吉丸センパイ……」

「湊斗くんはね、サッカーやってたけど挫折しちゃったんだって。でも、そのあとダンスと出会ったんだよ。だからね、怜音くんもまだまだ、これからだよ」


 わたしなんかが偉そうかなって思ったけど、何か感じるものがあったらしく、怜音くんは真剣な顔でうなずいて、

「……ありがとうございます。ぼく、ちょっと考えてみます」

 って言ってくれた。