「ただ……兄さんは早々に脱落しそうですけどね」

「えっ? どういうことだ?」


 葵くんがたずねると、怜音くんは肩をすくめた。


「兄さんは岸センパイに勝負をもちかけました」

「湊斗に……?」

「本当だよ」


 わたしは、葵くんに勝負内容を説明した。


「ハッキリ言って、兄さんに勝ち目はないですよ。吉丸センパイが、ドSな兄さんをえらぶとも思えません」

「たしかにな……」


 葵くんは納得しちゃってるけれど、わたしは何て言えばいいかわからない。


「だから、ぼくのライバルは岸センパイと……望月センパイ……あなたです」


 怜音くんは、葵くんをじっと見つめて言いきった。


「……そうか。おれは受けてたつぜ。おれだって、吉丸さんには本気で惚れてるからな」


 にやりとする葵くん。

 わたしは、ふたりのやりとりを、熱くなっている頬をおさえながら見つめていた。

 イケメン王子たちが、わたしをめぐって争っている。

 あらためて、ありえない状況だと思う。


「みんな、魔眼の暗示にかかってるだけなんだよ!」


 ぶっちゃけてしまいたいけれど、信じてもらえるワケもなく……。