怜音くんが深々と頭を下げると、葵くんは苦笑いして、

「おまえがあやまる必要ないよ。こっちこそ、弟のおまえの前で、苦手とか言うべきじゃなかったな。スマン」

 って、あやまった。

 すると、怜音くんはぶんぶんと首を横にふって。


「いえ! 兄さんは横暴なんですよ! 金曜だって、せっかく吉丸センパイとカフェデートしてたのに、思いっきり邪魔して! ゆるせないっ!」

「……おまえも大変だな」


 怜音くんの肩にポンと手を置いて、葵くんが瞳に同情の色を浮かべながら、ぽつりと言う。


「おれも姉ちゃんいるけど、口うるさいし、横暴なんだよな。おまえのキモチ、わかるよ」

「おおっ、わかってくれますか!?」


 あれ? 意外と意気投合してる……?

 最初、雰囲気がよくなかったからハラハラしたけど、この分だと大丈夫かも?


「――でも、ぼくだって、いつまでも兄さんの横暴ぶりに負けてばかりもいられません。吉丸センパイに対する想いは、だれよりも強いんだ。もちろん、兄さんよりも……」


 怜音くんの声には、強い意志がこもっている。