葵くんが大活躍して、聖ネクサス学園のサッカー部が勝利!
その熱気も冷めやらぬグラウンド上――。
にわかに不穏な空気がただよいはじめて……。
「ああ、神谷センパイの弟か……」
怜音くんを見るや、葵くんは眉根を寄せながら言った。
「ぼくのことをご存じなんですね? 光栄ですよ」
にやりとする怜音くん。
「新入生の代表であいさつしてたろ? それに……神谷兄弟といったら有名人じゃないか」
「いえいえ、有名なのは兄さんだけで……。ぼくはべつに……」
「謙遜するなよ。【癒やし王子】って言われて人気あるだろ?」
「望月センパイこそ、【さわやか王子】という異名に負けないオーラがあるお方だ」
上級生と下級生のフツーの会話なのに、やたら緊張感がある。
「あ、あの……怜音くん……?」
思わず口をはさむわたし。
「こんにちは、吉丸センパイ。金曜はごめんなさい」
怜音くんは、ようやくわたしを見た。
「ううん。熱を出したって、紫音センパイにきいたけど、もう大丈夫なの?」
「ええ、もう大丈夫です。あのときは見苦しいところを見せちゃって……」
眉を下げて怜音くんが言うと、葵くんは目を丸くした。
「吉丸さん、神谷兄弟と知りあいなの?」
「う、うん。いろいろあって……」