「石が入っちゃったよ! 賢ちゃん、どうしよう!?」

「どうしようって言われても……ん?」


 眼鏡の奥の目を細めて、賢ちゃんはぐっと顔を近づけた。


「つむぎの目、すっごく赤いぞ?」

「へ……?」


 風がすっかりやんだ部屋のなかは、嵐が過ぎ去ったあとみたい。

 床に落ちている手鏡を拾いあげて、自分の目を確かめる。


「ホントだ!」


 わたしの両目が、ワインみたいに赤くなってるよ!


「なんで急にこんな……」


 ふり返ると、賢ちゃんの様子がおかしい。

 顔を赤らめて、もじもじしている。


「どうしたの?」

「いや、つむぎって、よく見たら、かわいいよね」

「はあ?」


 なに言ってんだろ、こんなときに。


「つむぎ! ぼくとつきあってよ!」

「な、な、な、なに言ってんの!? 冗談やめてよ!」


 声が裏返ってしまった。

 賢ちゃんは背が高いし、顔は整っているほうだ。

 だけどイトコだし、小さいころからいっしょに育ったお兄ちゃんみたいなもので、恋愛対象になりようがない。

 それは賢ちゃんだって同じはず。


「ぼくは本気だよ、つむぎ!」


 賢ちゃんは、わたしの肩に手を置いてきた。