――と、遠巻きに見ているみんなが大さわぎしている声が耳に入って、わたしは我に返った。


「えっと、その……ケガとかは大丈夫だった?」

「ああ、相手の当たりが強かったからね。あちこち痛いけど、ケガまではしてないよ。ヘーキヘーキ」

「湊斗くんがね、『葵くんが攻撃の起点になってるから、ねらわれてる』って言ってたよ」

「へえ、湊斗が……? ん、アイツは……?」


 まわりを見わたす葵くん。


「あっ、ダンス練習するから帰るって」

「アイツらしいな。昔からマイペースなんだよな」


 葵くんが肩をすくめると、わたしは言った。


「湊斗くんから伝言だよ。『イイ試合だった』って……」

「そっか……」


 葵くんは、やわらかくほほ笑んだ。


「葵くんから刺激を受けたみたいだよ」

「おれから? まさか!」


 葵くんは首をふったけれど、ちょっとうれしそう。

 すると――。


「望月センパイ! 勝利おめでとうございます!」


 声をかけてきた男の子がいた。


「あっ、怜音くん!」


 黒いジャケットでビシッときめた怜音くんが、不敵な笑みを浮かべて立っていたんだ。