すでに葵くんは、ファンの女の子たちに囲まれていた。

 気おくれして、もじもじと立っていたら。


「望月くーん! つむぎちゃん、来たよ!」


 佐々木さんが大声で葵くんによびかける。

 葵くんは、わたしに気づいて、近づいてきてくれた。

 みんなが気をつかって、さりげなくはなれていく。

 魅了の魔眼の暗示にかかっている子が大半で、不満の声も出ない。


「やあ、吉丸さん。ホントに応援にきてくれたんだね。うれしいよ」

「葵くん、おつかれさま。勝利おめでとう!」

「ありがとう。なんか、みっともないところばかり見せた気もするけど……」


 苦笑いして、頭をかく葵くん。


「ううん、そんなことないっ! すっごくカッコよかったよ!」

「ホント? 吉丸さんにそう言ってもらえると、うれしいな」


 葵くんは、まぶしいまでの笑顔になった。

 その笑顔を見ていると、また涙が……。

 わたしが泣きだしたのを見て、葵くんはとまどいつつも、

「泣かないでよ」

 って言いながら、わたしの頬に手をそえて、涙をぬぐってくれた。

 葵くんは、いつもやさしい。

 そのやさしさに甘えたくなる自分がいる。