笑顔の葵くんがまぶしい。

 本当に、葵くんは【さわやか王子】だ。


「あとで葵に言葉をかけてやれよ。その涙をぬぐう役割は、葵にゆずるわ」


 湊斗くんに言われて、わたしは、自分がまた泣いていることに気づいた。


「いや、もちろん今日だけ……だけどな。イイ試合だったって、言っといてくれ」

「えっ、湊斗くんは会っていかないの?」

「ああ。スゲェ試合を見せられたからな。なんかこう、胸がかーっと熱くなっちまった。思いきりダンスしたい気分なんだよ。河川敷でダンス練習してから帰るわ。文化祭も近いしな」


 ニコッとする湊斗くん。


「葵に負けてられねーよ。最高のステージにして、つむぎの視線をくぎづけにしてやるから。じゃあな」


 手をあげて、湊斗くんは行ってしまった。

 葵くんから刺激を受けたって感じで、湊斗くん、イイ顔してたなぁ。

 やっぱり、ふたりは幼なじみなんだね。

 わたしなんかが「仲直りさせよう」なんて気をもむ必要なかったんだ。


「あれ? 岸くん、帰っちゃったの?」


 佐々木さんが首をかしげた。


「うん、ダンス練習があるからって……」

「ねえねえ、下におりて、望月くんに声をかけようよ」


 小村さんに引っぱられて、わたしはみんなとグラウンドにおりた。