そして、葵くんへの徹底マークは続き、敵陣を斬りさく高速ドリブルは封じられてしまった。

 チームは勢いを失い、敵に得点をゆるして一点差に。

 完全に、流れは相手にかたむいてしまったように見える。守る時間のほうが多くなってしまった。

 それでも葵くんは全力プレーをやめない。

 走って、ボールを受けて、倒されてもすぐ立ちあがる。

 味方を鼓舞(こぶ)するように声を出し、必死に守る。

 そして、数少ない攻撃チャンスのとき、ひたむきにゴールをねらった。


「葵くん、すごいね……」


 つぶやいたわたしの瞳から、涙があふれてくる。

 胸が熱くなって、鼻の奥がつーんとして。

 わたしは、頬をつたう涙をぬぐいつづけた。


「ちくしょう。葵のやつ、やりやがったな。宣言どおり、つむぎの視線をくぎづけにしやがった……」


 湊斗くんは、くやしさと、うれしさが入りまじったような声を出した。

 やがて、試合終了をつげるホイッスルが鳴りひびく――。

 3ー2で、聖ネクサス学園の勝利!


「やったあ! 勝ったよ!」


 わたしは飛びあがって喜び、湊斗くんとハイタッチして、佐々木さんたちと抱きあった。

 グラウンドでは、歓喜の輪の中心に、葵くんがいる。