葵くんがドリブルで攻めあがったとき、敵の選手がうしろからスライディングした。

 倒れこんで、足首をおさえる葵くん。


「ああっ……!」


 わたしはびっくりして腰を浮かせた。


「レッドだ、レッド!」


 湊斗くんが怒鳴った。

 だけど、審判が出したのはイエローカード。


「ちっ、今のは悪質だからレッドでいいのによ。完全に足裏を見せてたじゃねーか」


 湊斗くんは握りこぶしで手のひらを打った。

 そのあとも、葵くんは敵から徹底的にマークされて。

 激しくぶつかられて倒されることが増えた。

 ボールを競りあってるときに、相手の手が顔に当たり、うずくまる場面もあって。


「くそっ、今のはワザとくさいな。葵のやつ、完全にねらわれてるわ」

「そんな……」


 湊斗くんがつぶやいて、言葉を失うわたし。


「葵が攻撃の起点になってるし、守備でも貢献してるからな。そこをつぶすのはセオリーだけど、だいぶ荒っぽいチームだな。ケガしなきゃいいけど……」


 ケガ――というワードに、どきりとする。

 このまま、葵くんにケガなく試合が終わりますように!