「あの野郎、スピードもテクニックも格段に上がってやがる……」


 葵くんを賞賛しつつ、湊斗くんはしかめっ面だ。


「すごい……」


 サッカーをよく知らないわたしでも、葵くんがチームの中心だとわかった。

 前半だけで聖ネクサス学園は三点とって、そのうち二点は葵くんの絶妙なアシストによるもの。

 そして、葵くん自らも、サイドから中に斬りこんでゴールを決めた。

 湊斗くんの解説も、次第に熱をおびるようになって。

 3ー1で前半を折り返し、試合は後半へ。


「葵! 今だ、上がれっ!」


 とうとう湊斗くんは、大声で応援するようになった。

 まわりの佐々木さんたちも声援を送っているから、わたしだけだまっているのは逆に恥ずかしい。

 それに……がんばっている葵くんを見ていたら、応援のキモチを届けたくなったんだ。

 葵くんは攻撃するポジションだけど、何度も自陣まで戻って、守備も必死にやっている。


「葵のやつ、チームで一番走ってんじゃねぇか?」


 湊斗くんも舌を巻くほどだ。

 わたしは、勇気をだして口をひらいた。

 最初は小さかった声も、みんなにつられて大きくなっていく。


「葵くん! がんばって!」


 この声が、葵くんに届いていますように……。