湊斗くんと横並びで座ると、選手が入場してきた。


「おっ、葵のやつスタメンか」


 整列している選手のなかに、ユニフォームに身をつつんだ葵くんを見つけて、湊斗くんはちょっとうれしそう。


「まっ、三年が引退して、ごっそりぬけたからな。スタメンは当然として、活躍してチームを引っぱらなきゃいけねえ……」


 そこまで言って、湊斗くんは軽くせき払いした。


「……っと、べつにアイツがどうなろうと知ったこっちゃないけどな」


 もうっ。素直じゃないんだから。


「湊斗くん! 約束どおり解説してね。葵くんのプレーを中心に……」

「わかってるよ。アイツがいかにヘボかを……」


 湊斗くんは、こんなことを言っていたけれど……。

 試合がはじまってみれば、葵くんの独壇場だった。


「葵は左サイドのアタッカーだ。サイドから相手を崩すことが求められるんだが……」


 左サイドを駆けあがるときの葵くんは、まるで突風のよう。

 葵くんにボールが渡れば、会場全体が沸いた。

 猛烈なスピードでドリブルするから相手の選手は追いつけない。

 囲まれてしまっても、巧みなフェイントを入れて突破した。