「葵! 今だ、上がれっ!」
わたしの隣で、湊斗くんが声を張りあげている。
日曜日は雲ひとつない快晴――。
長閑市内のグラウンドで、聖ネクサス学園中等部と、べつの私立中学とのサッカー部の練習試合がはじまったばかり。
わたしは、グラウンドの最寄駅で湊斗くんと待ちあわせた。
服装はさんざん迷ったけれど、スキニ―ジーンズに、ダボっとしたパステルピンクのパーカーを合わせたよ。
あくまでサッカー観戦だし、カジュアルなほうがいいかと思ったんだ。
「つむぎ、めっちゃかわいいんだけど……」
湊斗くんは、わたしを見るなり、顔を赤くして、うれしさをかくすように口元に手をもっていった。
そこまでオシャレな格好してないのに、暗示にかかっている湊斗くんは、すっごくほめてくれる。
「ありがと。湊斗くんも、カッコいいよ」
「そうか? テキト―に古着屋でそろえたやつばっかだけど……」
湊斗くんはジャージのアウターと、ゆったりしたスウェットパンツで、気取らないストリート系といった感じ。
こだわりが感じられる着こなしで、さらに湊斗くんはスタイルがいいからカッコいい。