「情けないこと言っていいか?」

「え……?」

「正直ビビったわ~」


 そう言って、苦笑いする岸くん。


「一年坊のとき、神谷センパイに脅されたんだよな。『おまえが一年のイケメン王子か? 調子のってんなよ』って。あのひとにしてみりゃ、ちょっとからかった程度なんだろうけどな。葵もやられたって言ってた」

「望月くんまで?」

「おれたちのトラウマなんだよな」

「あはは……」


 紫音センパイ、ホント容赦ない。


「ありがとうね、岸くん」

「え……?」

「だって、こわいのに、わたしを助けにきてくれたもん」

「ん、まあ、つむぎのためならな……。佐々木たちに、つむぎが神谷センパイと礼拝堂のほうへ行ったってきいて、からだが勝手に動いてた」


 ニコッとした岸くんは、ここで話題を変えた。


「――で、一年坊の癒やし王子とデートしたって?」

「うっ……」


 その話題になると弱いなぁ。

 おもむろに、岸くんは両手でわたしの頬をつまんで、軽く引っぱった。


「ひゃって、ひょうがにゃかったんだひょ」

「えっ、何て言った?」


 クスクス笑う岸くん。

 もう、イジワルなんだからっ!

 やっと手をはなしてくれたから、わたしは言いなおした。