にらみあうふたり。

 またケンカになりそうで、ハラハラしていたら――。


「じゃあ、おれと勝負しろ、岸!」

「勝負……?」


 いぶかしげに、きき返す岸くん。


「ああ。文化祭で勝負だよ!」


 紫音センパイが、ビシッ! と岸くんを指さした。

 聖ネクサス学園では、毎年十月の終わりに、中等部と高等部の合同で文化祭をやるんだよ。


「ダンス部は講堂でステージやるだろ? おれたちのバンドは体育館でライブをやる。偶然、同じ時間帯だ。つむぎがどっちを観にいくか? えらばれなかったほうは、いさぎよくつむぎをあきらめる。どうだ?」

「望むところですよ」


 紫音センパイがもちかけた勝負に、岸くんはあっさりと乗った。


「忘れんなよ。男に二言(にごん)はねぇんだからな」


 紫音センパイは不敵な笑みを浮かべると、

「じゃあな、つむぎ」

 と、手をあげて去っていった。


「はぁ~~~~」


 紫音センパイの背中が遠くなると、岸くんは大きく息を吐きだして、うずくまった。


「どうしたの!? 大丈夫!?」


 わたしは、しゃがみこんで、岸くんの顔をのぞきこんだ。

 心なしか青ざめているような……。