「大丈夫だよ、つむぎ」


 岸くんは、わたしを見つめて、やわらかくほほ笑んだ。


「ちょっとびっくりしただけだ。つむぎはモテるから、そういうことがあっても仕方ない。でも、最終的につむぎと結ばれるのは、おれだ」


 ああ、岸くんの想いはゆらがない。

 ホッと、安心してしまうわたしがいる。


「それによ、うしろめたさを感じてくれたってことは、おれに脈ありなんじゃね?」


 言ってから照れくさくなったのか、頬をかく岸くん。


「ちっ、これくらいのゆさぶりじゃ意味ねぇか」


 舌打ちした紫音センパイに、岸くんは冷ややかな目を向けた。


「神谷センパイは異名どおりですね」

「ふふ、ドS王子ってやつだろ? まあ、おれは女だけじゃなく、男に対してもドSだからな」


 なぜか誇らしげに胸をはる紫音センパイ。

 わたしは、たまらず口をひらいた。


「紫音センパイはドSすぎます! わたしや岸くんだけじゃなくて、怜音くんに対してもそうだし、ファンの莉子センパイに対しても乱暴だし……。もっと、ひとに対して想いやりを……」

「そのうるさい口を、キスでふさいでやろうか」


 わたしに近づこうとした紫音センパイの前に、岸くんが立ちはだかる。


「おれが許すと思いますか?」