てか、紫音センパイは何も言わなかったけど、あの動画を見てたんだ!


「おまえと同じ二年の……望月だったか。アイツもつむぎをねらってんだよな? あと、おれの弟までつむぎLOVEなんだよなあ、困ったことに……」

「…………」


 表情を変えない岸くんをちらりと見やって、紫音センパイは意外そうな顔をした。


「なんだ、おまえ、知ってたのか?」

「ええ、おせっかいなやつらが学園のウワサ話をおれに聞かせてきますからね。べつに聞きたくもないのに……」

「じゃあ、昨日、怜音とつむぎがデートしたことも知ってんのか?」


 ああああああああ!

 余計なコトを言わないでよ――っ!


「え……?」


 岸くんの切れ長の瞳が、大きく見ひらかれる。


「それは知らなかったみたいだな」


 イジワルそうな笑みを浮かべる紫音センパイ。


「き、岸くん! それはね、怜音くんがうさぎを逃がしてしまってね、わたしが偶然つかまえて……。それで、そのお礼をしたいって言うから……」


 なぜかしどろもどろになりながら、事情を説明するわたしだけれど、下手な言い訳みたいになってる!