「――とはいえ、ちょっとイラついたのは本当だぜ? おまえがそんなに気合い入ってんのは、つむぎだから……か?」


 ふたりの視線が、わたしに向いた。

 ドキッ。

 ごくりとつばを飲みこんで、岸くんの言葉を待つ。


「ええ、おれは本気でつむぎに惚れてます。大切な女の子です。たとえセンパイが相手でも、一歩も引く気ないですから」


 そのあまりにストレートな言葉に、心が震える。

 暗示にかかっているはずなのに……。

 四人のイケメン王子たちだけは、心をあやつられているようには見えないんだ。

 それぞれの言葉で、やり方で、キモチをわたしにぶつけてくる。

 どんな魔力もおよばない、心のずっとずっと奥底からわきあがる何かにつき動かされているようで……。

 それは偽りじゃなくて、真実なんだと……そう思いたくなる何かがある。

 そして、とりわけ、岸くんの言葉はせつないまでに一途(いちず)だ。


「ふーん、なかなか言うねぇ」


 紫音センパイは首のうしろをさすりながら、余裕たっぷりに薄く笑った。


「ダンス王子だっけか? ダンス動画につむぎを映りこませるとか、なかなかの策士じゃねーか。ほかの男にマウントとれるもんな」

「いや、そんな姑息(こそく)なコトしねーし」


 さすがにムッとしたのか、岸くんは顔をしかめた。